インフルエンサーマーケティング
2021.12.01 (水)
ステマとは一体何?芸能人のステマ問題と業界の動向を徹底解説
昨今、SNSから広まる情報やイメージの影響は強力です。
しかし、間違った発信や閲覧者に誤解を与える発信を行うと炎上という批判的なコメントや拡散が行われるというリスクがあります。
その誤解を与える発信の代表的な例として「ステマ(ステルスマーケティング 英:Stealth Marketing)」があります。
今回は、ステマについて一体どんな弊害があるのかや、実際に事件へ発展した例、過去に芸能人が関与した例について詳しく解説します。
▼目次
ステマとは?
ステマとは、マーケティング手法のひとつである「ステルスマーケティング」を略した言葉で、消費者に宣伝であることを伏せてセールスプロモーションを行うことです。
具体的には、企業とは関係なく一個人の意見として商品やサービスに良い評価をすることで、消費者にリアルな口コミとしてとらえさせ購買意欲を高める仕組みです。
また、影響力のある芸能人に宣伝広告であることを伏せた商品やサービスのPRを依頼した場合も、ステマの対象です。
ステマが用いられる場面は以下のケースに分類されます。
- ショッピングサイトのユーザー評価欄
- ブログの体験レポート
- SNSの投稿
- 口コミサイト
消費者が価値のある商品やサービスを求める一方、世の中には類似した商品やサービスが出まわっています。
数ある中から消費者にとって良い物を選択することは難しく「結局どれを選べば良いのか?」と悩む人も多いはずです。
そのため、企業はステマを行い商品の購入やサービスの利用を後押ししようとするのです。
ただ、企業側が意図せずステマを行ってしまっているケースもあります。
発注先の代理店やインフルエンサーの不備でPR表記を忘れてしまっている場合などです。
広告主である企業は、発注や納品の際に注意深くチェックをする必要があります。
ステマの弊害
ステマの弊害は消費者側と、企業やそのサービスを利用するユーザー側の双方に起こります。
下記ではその代表的な例について解説します。
消費者が正しい選択をできなくなる
評価や口コミは購入の決め手となり得ることから、商品やサービスを選ぶ基準のひとつとなっています。
その基準をもとに選ぶ際にステマが蔓延していては、消費者は商品やサービスを購入する際に正しく選択できなくなってしまいます。
ステマを行った本人や企業だけでなく、サービスを利用するユーザーのイメージも悪くなる
ステマによる不当な評価と消費者に認識された場合、虚偽の評価をした人物、そして依頼した企業側のイメージダウンはまぬがれません。
マーケティングを展開するにあたり企業イメージは重要であるため、ステマ広告を打ち出すことは重大なリスクをともないます。
また、ステマを行った本人や企業だけでなく、その企業のサービスを良識的に利用するユーザーにも、ステマの加担が印象付くため双方のイメージが悪くなりかねません。
あからさまなステマは炎上する
実際に提供された商品やサービスが評価に見合わないクオリティだった場合、低評価や誹謗中傷のコメントが相次ぎ炎上に繋がるケースもあります。
一度炎上してしまったサイトのイメージ回復は簡単ではなく、ビジネスに大きな痛手となることでしょう。
とくに、芸能人がステマで炎上すれば、より大事になるリスクが高くなります。
芸能人が関与したステマ事件
芸能人のステマ問題は過去に何件も発生してきました。
現在、拡散の場は時代に合わせブログからSNSへと移っており、芸能人のステマ問題は長年問題視されています。
下記では、実際に起こったステマ事件を詳しく解説します。
ぺ二オク事件
ペニオク事件とは、世の中にステルスマーケティングの存在を世の中に大きく知らしめるに至った事件です。
この事件は、2012年に「ペニーオークション」というオークションサイトで、オークション参加者が安値で落札できないような仕組みを秘密裏に作りました。
結果、入札にかかる手数料を参加者から巻き上げる詐欺行為として、警察の捜査へと発展することになります。
事件があきらかになるにつれ、参加者を集めるために複数の芸能人が関与して報酬を受け取っていた事実が判明します。
このペニオク事件では8人の芸能人がワイドショーや週刊誌などで名前を取り上げられました。実際に関与した芸能人は20人以上いるとされています。
このとき、関与した芸能人は自身のブログに「格安で落札できる」といううたい文句で、ペニーオークションの名を挙げてステマに加担していました。
さらに、この事件の背景として、ステマに加担した芸能人は軽犯罪法違反に触れる可能性があるものの、捜査時点で時効の1年を過ぎていたため立件はされませんでした。
ミキ 京都国際映画祭 事件
京都出身のお笑いコンビ「ミキ」が、Twitterで京都国際映画祭を応援するツイートがステマの疑いを持たれ、批判が相次ぐ事態になりました。
正当な契約のもと行われるプロモーション業務では「PR」と表記する必要があります。
しかし、ミキの投稿ではPRの旨を明示していなかったことが騒動の原因でした。
また、この批判に京都市は「京都市のためのプロモーションだと世間に理解していただけるツイート内容」と見解を出し、ステマを否定しました。
ただ、閲覧者に推測を期待するのでなく、きちんとPR表記を行うべきでした。
血液クレンジング事件
2019年、血液循環や免疫力アップ、酸化力アップを目的とする「血液クレンジング」と呼ばれる治療法が世に広まりました。
きっかけは、複数の芸能人が血液クレンジングをすすめる内容をSNSに投稿したことでした。
ところが、その血液クレンジングの医学的根拠がないことを指摘する記事が投稿され、その効果や危険性についてさまざまな憶測が飛び交いました。
当然、その投稿を行った芸能人らへの批判が相次ぎ社会的な問題へ発展したのです。
投稿を行った芸能人へ金銭の受け渡しがあったのかは明らかになっておりませんので、ステマへの批判というよりも誤った治療法を世に広める手伝いをしてしまったことへの批判が大きかったようです。
プロモーションの投稿を行う際は、薬機法の遵守を徹底することや商品・製品の安全性をしっかり行うことが重要です。
フジテレビ女子アナのステマ疑惑問題
報道機関に勤める信頼度の高いアナウンサーでも、ステマ疑惑が浮上していました。
この件では、フジテレビの女性アナウンサー7名が以下の問題になりました。
・芸能人御用達の美容室にて無料でヘアカットやネイルなどのサービスを受けた
・代わりにSNSで写真をPRと明記せずに投稿した
そして、アナウンス室部長の聴取により該当アナウンサーへ事実確認が行われました。
その聴取によって、女子アナ7名にはフジテレビ内のエースとして人気を誇る、三田友梨佳アナウンサーも含まれていることが判明しました。
有名アナウンサーが同様の行為を行っていたことは、騒動の加速へつながり、業界に緊張が走るきっかけとなりました。
しかし、この問題で女子アナが受けたものはあくまで美容室からの無償サービスであり、報酬ではないことから、明確なステマとは断言しにくい背景があります。
無償サービスであっても、グレーな部分があり、社会的にバッシングを受ける対象になりえます。
てんちむのナイトブラ事件
今やステマ問題は芸能人のみならず、ネットを主戦場とするタレントやインフルエンサーにも蔓延する事態となりました。
代表的な例として、YouTuber、インフルエンサー、タレントとして活動する「てんちむ」によるナイトブラの宣伝があります。
この問題では、バストアップに効果的なナイトブラが紹介されましたが、実際に宣伝をしていたてんちむのバストが豊胸手術によるものだと判明しました。
当然炎上し、てんちむが謝罪するだけでなく、購入者に返金を行う事態に陥りました。
若い世代のインフルエンサーには未成年も多く、マネジメント事務所に所属していないケースも多くあります。
そのため、PRに関する研修を受けることもなく、法律やネットマナーを知る機会もなく、自覚せずモラルに反する行為をとってしまうケースもあります。
ステマは違法なのか?
現在、日本でステマを規制する法律はありません。
そのため、前述の女子アナによるステマ疑惑のような、サービスの無償提供で成り立つグレーな取引は増える一方です。
しかし、消費者庁のガイドラインによるとステマは景品表示法の違反にあたると公表されています。
また、人を欺き虚偽の評価で宣伝をすると、軽犯罪法に触れる可能性もあります。
さらに、2017年には日本弁護士連合会により、ステマの規制を求める意見書が公表されました。
法をつかさどる団体によるこの動きは違反行為の重大さを示唆しており、ステマの風評は今後さらに厳しくなる可能性があります。
正当な契約の元行われるプロモーション業務では、必ずPRであることを明示する必要があります。
また、PRであることを確認できない発信はステマと誤認される可能性があるため、注意が必要です。
そして、日本ではステマを規制する法律はないものの、一部海外ではれっきとした犯罪として扱われている国もあります。
2009年、アメリカの連邦取引委員会により、PRと明示をしない手段の利益供与があった場合は違法とみなす旨の指導がありました。
加えて、2008年にイギリスでは「不正取引から消費者を保護するための法律」が制定されました。
このように、日本のみならず海外でも規制にも及ぶステマ問題は、重大な違反行為である認識が必要です。
(2021/12/1加筆)
2021年11/9日、インスタグラムの投稿に関して初の措置命令が下されました。
行政からの指摘内容としては、景品表示法の基づく優良誤認とのことです。
対象の商品としてはバストアップのサプリメントで、以下の2社が対象となりました。
- 商品を製造・販売した企業(アシスト社)
- 販売業務を受託した企業(アクガレージ社)
同社が作成したインスタグラマー向けのレギュレーション内には、
広告だとわからないように投稿をしてほしいと指示があったとされています。
実際に同商品のハッシュタグで検索すると、PR表記などの主体者表記がないものがほとんどでした。また、投稿の内容も飲むだけで効果が出るなど過剰な表現が存在しておりました。
ステマに対しての法整備は現在も行われていませんが、行き過ぎたプロモーションを行っている企業には行政措置が下される可能性があります。
ステマを避けるための方法
ここでは、ステマを避けるための手段として3つの方法を紹介します。
レギュレーション・ガイドラインの策定
現代ではさまざまなウェブコンテンツが存在するため、これまで多くのステマや不当な取引による問題が世間に取り沙汰されてきました。
とくに、ブログやSNSを運営する企業にとっては、ユーザーによる疑惑や指摘の受け皿になってしまう他、サイト自体のイメージや企業運営の障害になりかねません。
大手企業のサイバーエージェントでは、タレントの公式ブログを多く持つAmebaブログの信頼低下を阻止するためにも、ステマ撲滅の動きとして独自のガイドラインを策定しました。
このガイドラインでは、プロモーション業務としてサービスを利用する際、依頼する企業との関係性について明示することを投稿の必須条件としています。
PR表記を明記する
「ステマの違法性」でも前述したように、正当な契約の元行われるプロモーション業務は、PRである旨を明示する必要があります。
また、PRの有無を確認できない投稿はユーザーにステマの疑惑を持たれかねません。
2009年、SNSの普及を背景に発足したWOMJマーケティング協議会では、口コミによるマーケティング業界の保安性を目的とした「WOMJガイドライン」が存在します。
WOMJガイドラインでも上記と同様のルールを設けるとともに、インフルエンサーが間違った情報を発信した過失により、社会的信頼の失墜を防ぐ目的があると記載しています。
インフルエンサー専門のプロモーション会社に依頼する
芸能人だけでなくインフルエンサーを専門に取り扱うプロモーション会社も存在します。
このような広告代理店は、独自のガイドラインを設けています。
投稿内容がステマにならないようチェックする機能も設けていますし、企業のブランドイメージを棄損することがないようクライアントごとにレギュレーションを作成してくれることもあります。
企業がインフルエンサーと直接やり取りを行うとマネジメントが十分に行えず、意図しない投稿をされるリスクがあります。
インフルエンサーの法律に関する意識もまちまちですので、リスクを回避するのであれば専門のプロモーション会社やマネジメント会社に依頼することがよいでしょう。
ステマ被害のない社会を目指そう
この記事で紹介した例のように、これまでさまざまなステマ広告が世間に広く知れわたりました。
しかし、私たちが日々の生活でよく目にする広告が偽りのものと判明した時、人々の信頼は簡単に失われてしまいます。
信頼の低下は、企業の発展に重大な影響を及ぼすため、到底無視できないリスクです。
また、昨今の炎上は年々ヒートアップしている風潮が見受けられるため、この時代におけるステマ行為の末路は容易に想像ができるでしょう。
倫理観に欠けるステマ広告を撲滅するためには、安易にステマ広告を利用しないこと、そして発信の際にはPRの旨について必ず明示することを覚えておきましょう。
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